ケガがなぜ起こるのか?

中高生のスポーツ傷害と発生要因

大好きなスポーツ!練習やトレーニングの成果を発揮する大事な試合…。
そんな大一番の戦いで悔いを残さないためにも、試合はもちろんのこと日々の練習から常に最高のコンディションで臨みたいもの。
しかし、スポーツには、突発的なケガや体の一部を使いすぎることによって発生するケガ、また中高生の場合はとくに成長期特有の傷害も隣り合わせだ。一生懸命ガンバっているからこそ知っておきたいスポーツ傷害の基礎知識。そこで、船橋整形外科・蟹沢 泉先生に、中高生に発生しやすいケガとその予防法などについて聞いてみた。

かにさわ・いずみ

傷害は予防によって防ぐことが可能です。
そのためには、練習量の調整はもちろん、ケガの症例などについても
しっかり把握しておくことが重要です。

プロフィール

かにさわ・いずみ/船橋整形外科病院勤務。スポーツ医学、膝関節外科、下肢関節鏡手術を専門とする。半月板損傷や靭帯損傷を中心とした膝関節スポーツ傷害や足関節などのスポーツ傷害に対する診療、関節鏡手術を中心とした下肢の外科的治療を担当。2002年よりバスケットボール女子全日本代表チームの帯同ドクターを務める。日本整形外科学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクター。

  • 1トレーニングで基礎体力を養おう!
  • 2正しい姿勢・動き(フォーム)を心がけよう!
  • 3練習量をしっかり自己管理しよう!
  • 4ストレッチやアイシングは欠かさずに!
  • 5テーピングやサポーターの力を借りよう!
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スポーツで起こる傷害は大きく3種類に分類される
スポーツ活動に関連して起きる傷害としては、(1)1回の大きな外力が加えられることによって起こるケガと、
(2)繰り返しストレスがかかることによって発生するケガ(オーバーユース症候群)とに分けることができます。
また、(3)成長期には大人と同じように起きる障害の他に成長期特有の障害もあるため注意が必要です。

外力によるケガは、足首の捻挫やひざのじん帯損傷、半月板損傷などが代表的ですね。
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オーバーユース症候群
一方、オーバーユース症候群は、疲労骨折や、筋肉や腱などの変形や損傷、炎症などから慢性的な痛みが出たりするものがあります。すねの内側(骨の表面)の炎症によるシンスプリント、ひざの周りの障害であるジャンパー膝、アキレス腱やその周囲の炎症、腰痛などが代表例としてあげられます。
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成長期に多いオスグッド病
また、成長期特有のオーバーユース症候群の代表的なものとしては、オスグッド病があります。成長期では骨が成長途中のため、すねの骨の上のほうの腱のくっついているあたりがまだ軟骨になっていて弱い状態です。そのため、運動で大きな負荷が繰り返しかかっていると傷んできて痛みが出てきます。

ここは、ジャンプやダッシュなどで大きな負荷がかかるので、どの種目でも障害は起こり得ますが、特にジャンプ動作の多いバスケットボールやバレーボール、サッカーなどでよく起こります。
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原因と対策を知っておこう
中高生のオーバーユース症候群の原因のひとつとしてまず、練習量が非常に多いことがあります。練習のしすぎや同じ動作を繰り返すことで、痛みが起こるのです。一般的な部活動ではトレーナーなどによるしっかりとしたケアが受けられないため、予防するためには、練習量の調整を考えるほか、筋肉の疲労や違和感を翌日以降に持ち越さないようにアイシング、ストレッチなどのケアも重要になります。

例えば、オスグッド病の場合は、成長期が終わって骨が出来上がれば大きな後遺症が残ることは少ないとは思われますが、痛みが強い時期には競技の妨げになりますし、無理をしすぎれば骨片などが残って成長期以降も痛みが残る場合もあります。柔軟性の良い悪いとオスグッド病などの発症との関連性は必ずしも科的に証明されているとは言えませんが、太ももの筋肉が硬い子が多いように思われ、ストレッチなどをしっかりするように指導したり柔軟性改善のリハビリをしたりすることが多いですね。

ひざのじん帯の損傷は長期間の治療を必要とする重大なケガのひとつですが、最近はその受傷原因が詳しく研究されるようになってきています。その結果、ジャンプの着地動作でひざが内側に入ってしまうなど、姿勢の悪さがケガをしやすい要因のひとつと分かってきました。そのため、動作を改善するトレーニングを行い、良い動きに戻すことが大切になってきます。特に体が出来上がる段階にある途中の中高生のうちから、良い姿勢と、基礎体力とを身につけておくことが大切でしょう。
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原則は「きちんと治療する
もしケガをしてしまったら、まずは必ず病院を受診してほしいと思います。ケガの種類と重傷度をハッキリさせた上で患部を治療し、患部以外も含めた基礎体力を高めてから復帰することが大前提となります。整形外科医の中でもスポーツの専門医とかひざの専門医とか分かれてくるので、できるだけ専門的なところで受診することも大切な場合があります。

病院を受診する選手のなかには「もうすぐ試合があるんです。何とかなりませんか?」というような選手もいます。しかし、無理をすると、完治までに余計な時間がかかってしまったり、患部をかばうような動作になって新たなケガや痛みを招いたりすることもあります。将来ある中高生であればなおさら、「きちんと治す」ことが原則であることを忘れないで下さい。
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リハビリ段階まできたら…
最近では、早期に回復を図り、しっかり訓練をして、できるだけ早期に、より安全に復帰することを目標としたリハビリを理学療法士がついて指導していく施設もあります。しっかり治療して、部分的な補助があればプレーできる、あるいは動き自体には問題ないけれど、何となく不安という段階まで来たら、患部をサポートする用品を使用するのもひとつの対処法であると思います。テーピングで補助する、サポーターなどの装具を用いる、シューズを調整するといったアプローチが考えられます。しっかりトレーニングして関節周辺の筋力などを強化するなど、良いコンディションに戻した上でプレーするのが前提ではありますが、ある程度良い状態になれば、テーピングで補助をして競技復帰を図るという場合もあります。

また、繰り返しストレスがかかることで起こるオーバーユース症候群に対しては、やはりテーピングによって痛みの出る動きとは逆の方向に誘導することでストレスを軽減して症状の改善を図る場合もあります。

さらに日常のケアとして、ストレッチングやアイシングをしっかり行うことも基本的な対策としてとても大切です。翌日に痛みを引きずらないようなセルフケアも怠らないようにしましょう。